社会基盤デザインとは

土木工学を基礎として

社会基盤デザイン(Civil Engineering and Regional Design)とは,安全で持続可能な社会基盤・都市機能をデザインするための学問領域です。英訳の"Civil Engineering"は,Military Engineeringと対比しての市民工学として,工学の歴史の中では最も古くから存在し,文明社会を築いてきた学問体系です。我が国においては,中国の故事『築土構木(土を築き,木を構える)』から土木工学と呼ばれ,私たちの社会生活と非常に深い関わりを持ち,市民生活の土台となっています。

土木工学の広がり

社会基盤とひとくちにいっても,土木技術が受け持つ分野の幅は大変広く,その規模も大小さまざまです.たとえば次のようなものがあります。

ライフライン
(電気,ガス,上下水道,通信網など)

交通網,交通計画
(道路。鉄道,橋やトンネルなど)

都市・農業施設,港湾,空港

水資源,エネルギー施設

都市計画,国土計画

災害対策,防災マネジメント

自然環境の保全・復元,など

これらのすべてが土木工学を必要としている分野です。これまでの時代の要請に応じて,多様な進化を遂げてきました。そしてこれからも,社会の発展と変容に際して,土木工学はさまざまな分野と広く深く繋がっていくことでしょう。

デザイン能力とグローバル時代

そしてこれからの時代は「デザイン」が重要になってきます。それは見た目の良さということではなく,「よりよく成し遂げる(問題解決)」ということです。ただ社会基盤をつくるだけではなく,地域社会の経済,社会,文化,歴史なども踏まえて,その地域の課題を適切に解決に導いていく手腕が問われています。またプロジェクトの国際化,公共事業の海外技術協力あるいは海外企業との競争の機会などが増えています。さらに,来るべき巨大地震や地球温暖化にともなう気候変動の脅威にも対応が求められています。そのためには,個々の技術分野を総合し,地域や国の枠を超えて,問題解決を目指していかなくてはなりません。いろいろな意味でグローバル化した社会において活躍できるデザイン能力をもつ技術者が必要とされているのです。

社会基盤デザイン学科の果たす役割

本学科では,土木工学とその周辺の専門知識を総合して,これからの時代の新たな道筋を切り拓くために,社会基盤をつくる土木工学はもちろんのこと,社会基盤・都市機能を「デザイン」する能力を学習します。今日,土木技術者が直面する問題は非常に多様化しており,みなさんが実社会に出るときには,これまでに経験したことのない複雑な問題が数多く待ち受けていることでしょう。そのようなときには,既存の学問や技術を組み合わせ,ときには多様な分野の多彩な人たちとともに「新技術」を創造していくことが求められます。そうして快適で安全な暮らしとその基盤をデザインする,それこそが「土木工学」の真髄です。その高みに向けて,大きく羽を広げて飛び立つ人材を育て上げ,自らも研究開発を通して人類社会に貢献することが「社会基盤デザイン学科」の使命なのです。