座談会 -コミュニティデザイン学科での学修と将来の姿-
コミュニティデザイン学科では公務員を目指す学生を応援しています。
学科での勉強や地域活動は、どのような形で将来の職業につながり、仕事をするときに活きてくるのでしょう?
そこで、宇都宮大学の卒業生で現在行政職公務員として活躍している4人に集まって頂き、仕事内容、大学にいる間にどんなことをしておいたらいいかと思うかなどを率直に意見交換をしていただきました。
座談会では、①自己紹介、現在の仕事内容、②大学でどのようなことを学んだか、③大学にどのようなことを期待するか、大学にいる間に何を学ぶべきか、④公務員試験の勉強方法について話し合われました。また最後に、コミュニティデザイン学科に入学する皆さんへのメッセージを話していただきました。
座談会の内容は、貴重な情報ですが、印象的であったのは、コミュニケーション能力を磨いておくとよいということでした。そのためには、地域の方や年配の方との関わりを持っておくことや、大学で学んだ理論と現実とのつながりを意識的に捉えるようにしておくことが大切であるというアドバイスがありました。
司会をしていて、コミュニティデザイン学科は、これらのアドバイスに応えられる教育方針、カリキュラムとなっていることを改めて感じました。
つまり、この学科は、ただ講義を聴くのではなく、伝達・発信する力、多種多様な人々と触れ合う経験、社会との結びつきを考える力を、地域での調査活動などの実践を通じて培い、論理的な考え方を身につける教育指針になっています。
授業科目として、社会のシステムや地域の資源や地域の実践について、学んで、観て、感じて、考える、さまざまな講義やフィールドワークがあります。
以下では、座談会の中でも特に中心部分となった③と頂いたメッセージ④についてお伝えします。
コミュニティデザイン学科で、地域での様々な方とのコミュニケーションをしていく中で、大学の講義での理論と実践とを一体化できるようになり、卒業後に公務員などの形で活躍してほしいと願っています。
場所:宇都宮大学 峰町5号B棟3階 ラーニングコモンズ4
日時:2016年1月20日(水)10:00から12:00
司会:三田妃路佳
記録:若園雄志郎
協力:大森
豊、土崎雄祐(地域連携教育研究センター)
公務員座談会出席者
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稲葉 敬一さん
平成21年3月 教育学部を卒業
現在は栃木県教育委員会・スポーツ振興課に所属しており、内閣府への出向経験もある。 -
小森 亜弓さん
平成24年3月 教育学部を卒業
現在は栃木県子ども政策課に所属しており、婚活支援を担当している。 -
平出 美裕さん
平成24年3月 教育学部を卒業
現在は小山市教育委員会・学校教育課に所属している。 -
露久保 一さん
平成17年3月 農学部を卒業
昨年まで那珂川町企画財政課、現在は総務課に所属している。栃木県への出向の経験もある。
―本日はお集まりいただきありがとうございます。さっそく皆さんに伺っていきたいと思います。すでに皆さんは社会人としてご活躍ですが、大学にいる間に何を学ぶべきだと思いますか?
稲葉さん大学ではいろいろと勉強してインプットはあったんですが、それをアウトプットする場がなかなかありませんでした。そのため、学んだことを生かして地域の諸問題をどうしたら解決できるかを考える機会や経験をもっとできたらよかったと思います。
―アウトプットとは、例えば政策提言などを学生のうちにしてみたかった、といったことでしょうか?
稲葉さんそうですね。まちづくりなどにどんどん参画していったりしたかったですね。実は、学生の時に「いばらき青年懇話会」に参加しました。これはいろいろ茨城県の政策を考えて、知事に提言をするというものです。そういうこともやってみて、まちづくりって楽しいなと感じたんです。それが今の公務員としての仕事にもつながっているといえます。
―学生の時のご経験が今につながっているのですね。小森さんはいかがでしょうか?
小森さん基本的には稲葉さんと同じようなのですが、実践的な部分をもうちょっとやっておけばよかったなと思っています。地域社会ではいろいろな事業を幅広くやっていて、知識としては聞いてたんですけど、それが実際の社会と知識の部分がどう結びつくかが自分の中でなかったのかなって社会人になって思いました。
―具体的にはどのような時に感じましたか?
小森さん仕事を始めてみると、県民の方や業者の方と付き合いが増えてきたんです。その方たちとこちらの考えや手続きなどを話すときに、順序立てて組み立てて説明するということが、私はすごく苦手だなと気づいてしまいました。大学時代は時間もあるし、自分がやろうと思えばいろんな人と触れ合う機会もできます。たくさんの場所に行って人と関わる中で、説明の仕方などを学んでおけばよかったと感じています。大学の授業としても現場に出るようなことを積極的にやっていただけるといいのかなと思います。
―大学に期待しているのは実践する機会と、学生自身にはいろんな人と接触をしておいた方がいいよ、ということですね。では次に、平出さん。
平出さん知識をそこそこに入れておくのは大事だとは思うんですけど、私がいまいる学校教育課には、転校手続きや、学校への不満がある保護者の方とか、いろんな方が来ます。中には冷静ではない方もいるので、やっぱりコミュニケーションを人ととる練習というのを学生のうちからしておくとすごくいいなと思っています。学生のうちって、友達同士の付き合いが一番多いと思うんですけど、自分の年齢と全然違う人と話す機会があるといいかなと思います。
―大学時代のゼミは成人教育のゼミでしたね。
平出さん実は学生のとき、ゼミの先生の研究室に行けば高齢の方と話す機会が多くあったんです。私が年齢が上の人と話すことにあまり抵抗を感じないのはそういった環境があったからだと思っています。大学以外のところでもいろいろな経験をしておくと、社会に出た時に社会人と学生とのギャップをあまり感じなくて、強い人になれるかなと思います(笑)。
―世代間の交流が図れるような環境があるといい、ということですね。最後になってしまいますが、露久保さんは大学にどんなことを期待していますか?
露久保さん小森さんと平出さんがおっしゃったことを言おうと思っていたので…(笑)。いろんな人と出会ってもらいたいなというのはすごく思いますね。きっかけは県庁の地域振興課に来たことかなと思っているんです。地域振興課では県内の各市町村の担当が振り分けられるんですが、私が担当したのは那珂川町から真反対の足利とか栃木とかでした。最初は仕事だからという理由だけで行ってましたが、だんだん栃木県内にもこんな面白いところがある、こんな元気な人がいる、と思えるようになりました。そして現地の人たちに、僕は那珂川町役場にいるんです、と言うと、那珂川町のストレートな印象を言ってくれたりしました。栃木県庁の人もそうでしたけど、自分のエリアのことを外から評価してくれるのを受け止めたり、自分も外に出て行って、経験をフィードバックしたり生かしていけたりできたらな、と思っているんです。
―自分の町を外から見つめ直すのは貴重な経験ですね。
露久保さん人っていうのはすごく大事です。現役の宇大生も参加していた研修で、東北出身のある学生さんが、宇都宮でいろんな人と出会って宇都宮にすごく思い入れができたし、他にも別の活動で行っていた場所があるので、そういったところに就職したいって言っていたんです。人と出会ったから思い入れができて、その地域で活躍したい、と考えるのを見て、人と出会うことがとても大事なんだなと思ったんです。
―学生さんの話は、宇都宮で人と触れ合って愛着が出たということですか?
露久保さんそれを聞いてすごくはっとしたんです。自分は無意識のうちに、生まれ育った町に帰るんだ、という意識しかなかったんで…。そう思ってる裏には元々地域との関わりがあったという前提があったのかなと感じます。逆に言えば、今の高校生や小中学生にそういう接し方ができれば、一旦出ていくことはあっても、何かの機会に戻ってきたり、常につながっていてくれたりという風になるのかなと思ったんです。
―人と人とのつながりがあると帰っていこうと思うんでしょうね。それがもしかしたら地域振興のひとつの手法になるのかもしれません。それでは皆さん、最後に新学部の新入生に向けてメッセージをいただけますか?
稲葉さん宇都宮大学の新しい「地域デザイン科学部」については、政治経済など幅広く学べると思いますので、その学んだことが公務員をはじめとする仕事に活かされると思います。宇都宮大学は栃木県にあるので、栃木県の問題などをいろいろ学んでいただいて、それに対する解決策をどんどん出していただければな、と思います。
小森さん栃木県にいる人はもちろんなんですけど、他県から来る人も、宇都宮って都会だったり、ちょっと離れれば自然が広がっているのに気づくと思います。たくさんの地域でいろいろなことを学ぶことができると思うのでいいところですよ。新しい「地域デザイン科学部」はまちづくりのプロを育てますということが謳い文句ですから、多くのことを学んで幅広い視野でものを見れるようになれると思うので、頑張ってください。
平出さん自分が社会人になって思うのは、いろんな方とコミュニケーションをとっていろんな方と話す機会が増えるということです。新しい「地域デザイン科学部」では幅広い視点から地域のことを学ぶことができる学部ですので、ぜひ大学の貴重な4年間の間に社会の街のことを幅広く学んで、多角的な視野を持っていただきたいと思います。
露久保さん栃木県は日光や那須などきれいなところがありますし、餃子とかイチゴとかおいしいものもたくさんありますけども、それよりも栃木県内には面白い人があちこちにたくさんいます。ぜひ大学の4年間でその人達に会いに行ってもらいたいと思います。那珂川町に来れば僕がいますので、ぜひ会いに来てください。
―本日は長い時間本当にありがとうございました。大変勉強になりましたし、いい機会になったと思います。これからのご活躍を心より願っております。